大丈夫か?専門家?権限だけ肥大して能力が無ければ今までと同じ
来月から「耐震偽装」確認厳格化 二重チェック、実効性は?
ニュースソース http://www.sankei.co.jp/shakai/wadai/070521/wdi070521000.htm
■判定員二足のわらじ、地域格差も
耐震強度偽装事件の教訓を踏まえ、国は6月から、建築確認を2重にチェックする新たな制度を始める。「偽装の見逃しは繰り返さない」(国土交通省幹部)と鳴り物入りでの導入だが、判定員の資格試験では、受験者の半数近くが不合格になるなど“優良専門家”の確保に苦慮。判定員も本業の傍らでチェックを行わなければならないほか、人員について地域格差の問題も指摘される。手探り感は否めず、課題を抱えたまま一歩を踏み出すことになりそうだ。
■狭き門
事件の再発防止策は法改正によって、危険な建物を造った建築士らへの罰則強化▽建築士の名義貸しの禁止▽構造設計と設備設計を担当する専門の建築士認定制度の導入?など多岐に及ぶ。欠陥住宅の購入者の保護策として、住宅売り主に保険加入の義務付けを盛り込んだ新法案は、今国会に提出されている。
他に大きな“目玉”と位置付けられているのが建築確認の厳格化だ。6月施行の改正建築基準法では、高さ20メートル(6階程度)を超すマンションなど一定規模以上の建築物を対象に、建築確認の際、自治体や民間確認検査機関がチェックした後、新たに「構造計算適合性判定機関」が構造計算を再チェックすることになった。
判定機関には、建築確認の実績がある大手民間などが、内部に判定の専門部署をつくって名乗りを上げる見通し。専門の新会社が設立されるケースも考えられる。
国交省は3月、機関に属する判定員養成のため全国8地区で講習会を開いた。参加者は建築を専門とする大学教授や1級建築士らプロフェッショナルばかり。ところが、講習の最後に実技演習の試験を実施したところ、受験者3354人のうち合格者は39%(1315人)にとどまった。
試験内容は、構造計算の誤りや偽装を見つけるもの。不合格は48%(1608人)に上り、残り13%(431人)は誤りを判別できたものの、どのように間違っているかを適切に記述できず、審査能力があるかどうかの判断が保留された。
保留者は4月26日に再試験が行われ、411人のうち60%(246人)が合格とされた。
■未知数
国交省は2重チェックの対象となる建物を年間7万件程度と試算し、「週1日8時間勤務できる判定員が全国で1500人程度必要」としている。人員は再試験によって確保できたが、多くは建築事務所やゼネコンの第一線の設計者とみられ、どこまで業務に従事できるか未知数だ。
国交省が判定員合格者に聞いたところ、「ほぼ毎日できる」との回答者がいた一方で、「週1回」「月3回程度」などバラつきがあった。同省試算をもとにすれば、1人当たり年間40件以上の判定業務をこなさなければならず、「結局は流れ作業になりチェックがずさんになる恐れもある」(関東地方の建築士)との声が出ている。
判定員や判定機関が大都市圏に集中し、地方と格差が生じることも懸念される。判定機関は当初、全都道府県に設けられる予定だったが、国交省によると、自治体内に確保できそうなのは26都道府県だけ。残りは圏外の判定機関に委託することになりそうという。
民間検査機関の関係者は「設計者が遠隔地だと、ヒアリングが必要な際に日時のすり合わせなどで時間をロスしかねない」と指摘。「2重チェックは建前として意義はあるが、時間と作業に追われる実態は通常の建築確認と何ら変わらない。実効性が担保されているのか疑問で、『3重チェックが必要』という皮肉なことにならなければいいが」と話している。